主催・企画 計測自動制御学会 制御部門
 本年度のSICE Annual Conference in Okauama (SICE2005)では,学生の皆さんから入社数年目の企業の方までを対象とした技術講演を企画しています.今回は,近年プラント制御への応用などで大きな成果を挙げている,モデル予測制御(MPC)を取り上げ,ご活躍中の先生に平易に解説して頂きます.
まずMPCの基礎理論とMPCを用いる際の制御の一般的なポイントをご紹介頂き,理論と現実のギャップを埋める鍵はどこにあり,どのように設計問題を解いてゆくか,に焦点をあててご講演頂きます.実例として,火力発電所の脱硝制御とはどのようなプロセスなのか,どの点で制御が難しく,それをモデル予測制御でどのように解決したか,をお話し頂きます.制御理論を学んでいる学生の皆さん,また企業において制御系設計に従事されている方,これから担当される方には絶好の機会です.多数の方々の参加をお待ちしております.
[制御部門事業委員会: 上智大学 伊藤和寿]
期日 2005年8月10日(水) 10:20-12:20
会場 岡山大学津島キャンパス教養教育棟A棟1階A107教室
SICE2005map
岡山県岡山市津島中一丁目一番一号,電話(086)251-8119]
http://www.okayama-u.ac.jp/jp/tsushima_j.html〕
講師 豊田 幸裕君(新居浜工業高等専門学校)
講義内容 使えるモデル予測制御 ―理論と現場のはざま―
 モデル予測制御(Model Predictive Control: MPC) について,そのアルゴリズムの基本概念を述べ,対象プロセスのダイナミクスを記述するための線形入出力モデルとシステム同定法に基づくモデル構築やモデル化誤差を考慮した制御量の予測式を紹介する.次に,予測値が参照軌道に一致する最適操作量決定のための制御則を紹介し,予測ホライズン,制御ホライズン,参照軌道,操作量ペナルティなどのチューニングパラメータについて解説する.また,MPC適用事例の増加の理由の一つである,制約条件を考慮したMPCについても紹介し,プラント制御階層でのPID制御系とMPCの位置づけに関する設計上の注意点などを解説する.最後に本講義の適用事例として,火力発電所の脱硝プロセス制御の要求仕様および解決すべき課題(制御性能向上と運用コスト節減の両立)について述べ,それをどのように解決したかを具体的に紹介する.
今回紹介するMPCの適用対象であるコンバインドサイクル発電プラントの脱硝プロセスは,排ガス中の窒素酸化物を脱硝触媒層を通過する直前にアンモニアを注入・混合し,窒素と水とに分解するものである.このプロセスは,運転条件に依存した非線形性を有すること,フィードバックループ中に排ガス分析計のむだ時間が存在することなど,制御上難しい問題を含んでいる.ここでは内部モデルとして著者らが提案している,RBF-ARXモデル(Radial Basis Function based Auto-Regressive with eXogenous input model )という非線形モデルを紹介する.このモデルは運転条件に伴う制御対象の時定数の変化にも対応した構造をもっており,運転条件の激しい変動によって生ずる制御対象動特性の非線形な挙動に連続的に対応できるものである.実装にあたっては,火力発電プラント用ボイラ蒸気温度制御に最適レギュレータを適用したときと同様,既設PID制御系と同一制御階層でMPCを併設する方式とした.この方式では,MPC制御信号はPID信号に対してゼロを中心としたバイアス信号であることが望ましく,予測出力を計算する際の工夫箇所などについても解説を行う.最後にMPCを実装した結果,既設PID制御系に比べてどの程度の定値制御性能の改善,運用コストの節減効果が達成できたかを定量的に示す.
定員 130名(定員になり次第締切らせて頂きます)
参加費 なし
申込方法 学会ホームページのオンライン申込 https://www.sice.or.jp/bukai_web_appli/sindex.html にアクセスし,「SICE2005 チュートリアルセミナー」を選び,画面の指示に従って必要事項をご入力下さい.
申込締切 2005年8月1日(月)
問合せ先 伊藤 和寿
〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学理工学部機械工学科
電話:03-3238-3606, FAX:03-3238-3606, E-mail:kazu-ito@me.sophia.ac.jp
講師紹介 豊田 幸裕(とよだ ゆきひろ)君(正会員)
 1977年広島大学大学院工学研究科修士課程修了,福岡大学工学部助手,(株)本田技術研究所,日本ベーレー(株)を経て,2002年より新居浜工業高等専門学校機械工学科教授となり,現在に至る.2000年に九州大学大学院電気電子システム工学専攻博士後期課程修了.環境計測・制御を柱とし,産業プロセスへのモデル予測制御およびケモメトリックスの適用に関する研究に従事.計測自動制御学会,システム制御情報学会,電気学会,日本機械学会,IEEEなどの会員.博士(工学)